●巨人は 1回に丸佳浩外野手(30=広島)の「17号ソロ」で先制し、 2回は立岡宗一郎外野手(29)の中前適時打で追加点を挙げた。先発今村信貴投手(25)は 3回まで無安打に抑えた。阪神は 5回に北條史也内野手(24)の中前適時打で 1点を返した。先発西勇輝投手(28=オリックス)は 5回 2失点で降板。巨人は先発の今村から大竹寛投手(36)につないだ。阪神が競り勝った。 2- 2の延長11回に大山悠輔内野手(24)の適時打で 1点を勝ち越した。飯田優也投手(28)が 3年ぶりの勝利を挙げ、藤川球児投手(39)が「2試合連続で2セーブ」目。巨人は 2回までに 2点を先行しながら追加点を奪えず、今季ワーストに並ぶ「4連敗」を喫した。巨人田口麗斗投手(23)が「3敗」目。
●阪神新外国人のヤンハービス・ソラーテ内野手が、反撃の弾丸 2塁打など連日の活躍で巨人連倒を導いた。ド派手な「セクシータイム」パフォーマンスもチームを盛り上げ、ノッたジェフリー・マルテ内野手(28)も「9号同点ソロ」。負ければ再び自力Vが消えた一戦で延長11回、 4時間37分の激闘を制す大山の決勝打を呼び込んだ。虎の“ソラマル”コンビが大逆襲を引っ張ってくれそうだ。左翼線の鋭い打球に東京ドームの虎ファンがこの日初めて沸いた。沈滞ムードを振り払ったのは、明るく陽気な新助っ人ソラーテだ。 2点を追う 5回一死。今村の初球カーブを振り抜き、会心の左翼線 2塁打だ。完全投球されていた左腕からチーム初安打。全力疾走で 2塁に到達すると、縦に開いた両手をパチンッとたたく「クロコダイルポーズ」をさく裂させた。さらに両手の人さし指を突き上げ、ノリノリでコミカルなダンスを披露。ベンチも盛り上げ、北條の適時打を呼び込んで 1点差に迫った。マルテが一発を放てばこれで「9戦負けなし(8勝1分け)」。不敗神話を継続させた。ソラーテが 1軍に合流し、 2日目。初めて「5、6番」に“ソラマル”が並んだ。年齢ではマルテが 4歳下だが、日本の野球については半年“先輩”。ベンチでは隣り合わせで座り、攻撃前にはチャートに目を通しながら言葉を交わす場面もあった。前日26日にソラーテが「勝ち越し2ラン」で鮮烈デビューを飾れば、この日はマルテが「同点ソロ」」。相乗効果を生んでいる。“ソラマル”で勝つ。「二人三脚」で虎を引き揚げる。
●北條史也内野手がタイムリーで反撃ムードを高めた。「7番遊撃」で先発。 2点を追う 5回二死 2塁、スライダーをしぶとく中前に運び、ヤンハービス・ソラーテ内野手(32=前マーリンズ傘下3A)を迎え入れて 1点差に迫った。ソラーテ加入で遊撃争いが激しさを増す中、 2安打 1打点で猛アピールした。
●高山俊外野手(26)がビッグプレーで激闘勝利を呼び込んだ。同点の延長10回一死 1、 2塁。外野は前進守備を敷く。炭谷銀仁朗捕手(31)の大飛球が右翼へ上がる。阪神ベンチの誰もが思わず天を仰いだ。抜けた、やられた…。だが、 7回裏から右翼で途中出場していた高山は、勝負を捨てていなかった。我を忘れて必死に背走する。最後は身をよじらせてダイブ捕球。「サヨナラ負け」の窮地を救う「ザ・キャッチ」だ。大熱戦を制した矢野監督も絶賛した。右翼での守備は 5日の広島戦(甲子園)以来。今季は主に左翼を任され、出場60試合中、11試合しか守ったことがなかった。まさに虎を地獄からすくい上げた。もちろん、矢野監督からは“MVP”に指名された。この日は2打数無安打で悔しさを隠さない。燃えたぎる闘志を胸に秘め、定位置だけを奪いにいく。外野には福留孝介外野手(42)やソラーテがいる。延長11回一死 3塁で浅い左飛に倒れた。悔しかった。結果を残すのみ。レギュラー再奪取へアピールする。
●「4番」が激闘に決着をつけた。延長11回二死 3塁。ここぞの場面で、大山悠輔内野手が決勝打を放った。田口の真っすぐを中前へクリーンヒット。 4時間37分のロングゲームを制して東都の猛虎ファンを沸かせた。気合十分だった。直前の10回一死 1、 2塁。「サヨナラ負け」かと思われた炭谷の大飛球を「ドラフト1位」の先輩高山が背走曲芸キャッチ。その姿に心打たれた主砲が燃えて打った。プロ 3年目の24歳。だが、ゲームに入れば年齢は関係ない。伝統球団の「4番」を任され、計り知れない重圧と戦っている。得点圏打率は「3割4厘」。「勝利打点8」は堂々のチームトップだ。チームを背負う自覚がある。だからこそ…。歓喜の瞬間には、感情が爆発する。負ければ再び「自力V」が消えた一戦で巨人連倒を導いた。残り49試合。「4位」ながら首位巨人に「7.5」差に迫った。「4番」がネバーギブアップを体現し、白星を重ねる意気込みだ。チームトップの「56打点」を残している。どれだけ、それまでの打席で天を仰いでも、どれだけ三振を喫しようとも、勝負どころで打てば許してもらえる。しかも、「伝統の一戦」であれば認めてもらえる。これが「虎の4番」。巨人はこの日、岡本和真内野手(23)が「4番」から「7番」に下げられ、坂本勇人内野手(30)が代役を務めたが、ソラーテが加入しても自分は「4番」に座れる。「2連勝」で借金は「3」。負ければ「自力優勝」が消滅する危機だったが、首位・巨人との差を「7.5ゲーム」と縮めた。「7月打率0.304」。一皮むけた大山が勝負の夏を彩る。
●阪神の先発西勇輝投手(28=オリックス)は粘投で試合を壊さなかった。 1回に丸に「先制ソロ」を浴び、 2回終了時点で 5安打 2失点。それでも 3回以降は立て直し、 5回を 2失点にまとめた。93球の粘投で試合を作ったが、今季17試合の登板で先制を許したのは15試合。 5月24日のDeNA戦(横浜)に並ぶ今季最短タイとなる 5回でマウンドを降りた。
●ピアース・ジョンソン投手(28=サンフランシスコ・ジャイアンツ)は 2日連続でクリーンアップ斬りだ。同点の 7回に登板し、「3番」丸を左飛、「4番」坂本勇、「5番」亀井は連続三振に仕留めた。ラファエル・ドリス投手(31)不在のブルペン陣を力強く支えている。
●阪神は同点の 8回から「4番手」で登板した岩崎優投手(28)が 1回1/3を無失点で切り抜け、劇的勝利をアシストした。ドリスと能見篤史投手(40)が 2軍降格後の新勝利の方程式で、 2戦連続 8回を任された。首脳陣からの信頼を感じ、懸命に腕を振り続ける。
●石崎剛投手(28)とのトレードでロッテから移籍した高野圭佑投手(27=千葉ロッテ)がタテジマデビューした。同点の10回裏に登板。 1安打 1死球で無死 1、 2塁とされるも、犠打を試みた代打田中俊のゴロを 3塁封殺。続く炭谷の大飛球を高山が好守したところでマウンドを下りた。
● 1点差の延長11回。マウンドに上がった藤川球児投手(39)。この日DeNA打線を相手に一死しか取れず、 8失点でKOされた中日松坂大輔投手(38)。「松坂世代」の仲間というだけでなく、球児と松坂は仲がいい。ゴルフで松坂がホールインワンする場面を 2度、目撃したことがあるというのが自慢だ。同い年のスターに負けないという気持ちもあって現役を続けているが、この日ばかりはエールを送る粘投になった。抑えに戻ってきた右腕が「2試合連続セーブ」。 2四球、安打で32球を要したものの最後は 1点差を守り切った。ともに「ドラフト1位」で入団。大リーグを経験し、日本に戻ってきた共通項もある。球児も阪神復帰後は先発投手を目指していたが、結局、定着することはできなかった。そんな経緯もあって松坂の苦しさが分かっているし、リスペクトもしている。だからこそ頑張ってほしい。俺もやるで。球児も間違いなく「G倒連勝」の立役者だ。
記事をまとめてみました。
<巨人 2- 3阪神=延長11回>◇第15回戦◇阪神 6勝 9敗 0分◇27日◇東京ドーム
巨人は 1回に丸の「17号ソロ」で先制し、 2回は立岡の中前適時打で追加点を挙げた。先発今村は 3回まで無安打に抑えた。
阪神は 5回に北條の中前適時打で 1点を返した。先発西は 5回 2失点で降板。巨人は先発の今村から大竹につないだ。
11回表阪神二死 3塁、大山悠輔内野手が中前に適時打を放った=東京ドーム
阪神が競り勝った。 2- 2の延長11回に大山の適時打で 1点を勝ち越した。飯田が 3年ぶりの勝利を挙げ、藤川が「2試合連続で2セーブ」目。巨人は 2回までに 2点を先行しながら追加点を奪えず、今季ワーストに並ぶ「4連敗」を喫した。
11回、大山悠輔内野手が勝ち越しの中適時打を放ち、ガッツポーズを見せる=東京ドーム
阪神は 7回にマルテの「9号ソロ」で追い付いた。 7回からジョンソン、岩崎とつなぎ無失点。巨人も小刻みに継投して延長に入った。
阪神は11回、大山の適時打で勝ち越して「2連勝」。巨人は今季 4度目の「4連敗」。
阪神飯田が「今季初白星」、藤川が「2セーブ」、巨人田口が「3敗」目。
5回表阪神一死、ソラーテ内野手は四球左翼へ 2塁打を放った。投手今村信貴=東京ドーム
阪神新外国人のヤンハービス・ソラーテ内野手が、反撃の弾丸 2塁打など連日の活躍で巨人連倒を導いた。ド派手な「セクシータイム」パフォーマンスもチームを盛り上げ、ノッたジェフリー・マルテ内野手も「9号同点ソロ」。負ければ再び自力Vが消えた一戦で延長11回、 4時間37分の激闘を制す大山の決勝打を呼び込んだ。虎の“ソラマル”コンビが大逆襲を引っ張ってくれそうだ。
◇ ◇ ◇
左翼線の鋭い打球に東京ドームの虎ファンがこの日初めて沸いた。沈滞ムードを振り払ったのは、明るく陽気な新助っ人ソラーテだ。 2点を追う 5回一死。今村の初球カーブを振り抜き、会心の左翼線 2塁打だ。
ソラーテ いいコンタクトをしようと思った結果だよ。
7回表阪神一死、マルテ内野手は左越えソロ本塁打を放った。投手澤村拓一=東京ドーム
完全投球されていた左腕からチーム初安打。全力疾走で 2塁に到達すると、縦に開いた両手をパチンッとたたく「クロコダイルポーズ」をさく裂させた。さらに両手の人さし指を突き上げ、ノリノリでコミカルなダンスを披露。ベンチも盛り上げ、北條の適時打を呼び込んで 1点差に迫った。
タテジマデビュー 2日ですっかり人気者だ。前日は「22番遊撃」で出場し、 7回に左翼上段へ勝ち越しの「来日1号」をぶっ放した。この日は休養日の福留に代わる「5番左翼」と打順もポジションも変幻自在。初回に守備に就く際は、黄色に染まった左翼席の大声援に両手を突き上げ、虎党のハートをわしづかみにした。
誰よりも刺激を受けたのが、後ろを打つ6番マルテだろう。 1点を追う 7回一死で沢村の 153キロをフルスイング。左翼席上段に「9号同点ソロ」を突き刺した。ベンチに座っていたソラーテは、お祭り騒ぎでグラウンドに飛び出し、矢野監督よりも先にハイタッチ。その後は自分が打ったかのようにマルテより先にハイタッチを重ねてさらに盛り上げた。“ソラマル”コンビの活躍で終盤に追いつくと、延長11回に大山の決勝打が飛び出した。マルテが本塁打を打てば、 9試合負けなし。不敗神話も継続だ。
マルテ内野手が豪快なスイングをみせた=東京ドーム
マルテ 昨日は彼が打ってうれしかった。今日は彼が喜んでくれた。一緒に戦っている仲間としてうれしいよ。
ソラーテ マルテ選手が打って勝ててよかったよ。
矢野監督も 2人の話題に会心の笑顔だ。「本当にチームの士気も上がる。ファンの人もソラーテの動きを注目して、それを見て喜んでくれている。 2人はベンチでもよく話をして相乗効果はあると思う」。首位巨人を連倒してカード勝ち越しが決定。東京ドームは「3連敗後4連勝」だ。負ければ再び「自力V」が消えた危機も脱し、首位まで「7.5」差に押し戻した。ラテンのリズムが、追い込まれた虎をよみがえらせた。
7回表阪神一死、「左越え本塁打」を放ったマルテ内野手(左)とハイタッチを交わすソラーテ内野手=東京ドーム
飛び跳ねた。分かち合える友がいれば、喜びは何倍にもなる。試合を振り出しに戻したのは「6番・マルテ」。 7回、豪快なスイングで「9号ソロ」を放つと、満面の笑顔で手のひらを合わせた。
「きのうは彼(ソラーテ)が打って、自分もうれしかった。きょうは一緒に喜んでくれて、うれしい」
1点を追う 7回、先頭のソラーテが凡退し、虎党はため息に包まれた。その直後、 3ボールからの 4球目。 153キロ直球が外角低めにくると、狙い通りにかっ飛ばした。
打球はぐんぐん伸びて左翼席上段に着弾。「チームの助けになるために、しっかり強いスイングをしようと思っていたよ。追いつくことができて最高のホームランになったね」。割れんばかりの大歓声を味わいながらダイヤモンドを一周。ベンチ前のタッチは、なぜか? ソラーテに“旗振り役”として先を越され、腹を抱えて笑った。
7回、「同点ソロ」を放ったマルテ内野手(左)はソラーテ内野手とハイジャンプタッチ=東京ドーム
マルテが一発を放てばこれで「9戦負けなし(8勝1分け)」。不敗神話を継続させた。
ソラーテが 1軍に合流し、 2日目。初めて「5、6番」に“ソラマル”が並んだ。年齢ではマルテが 4歳下だが、日本の野球については半年“先輩”。ベンチでは隣り合わせで座り、攻撃前にはチャートに目を通しながら言葉を交わす場面もあった。前日26日にソラーテが「勝ち越し2ラン」で鮮烈デビューを飾れば、この日はマルテが「同点ソロ」」。相乗効果を生んでいる。
「(存在が刺激になるのは)もちろん。同じチームメートとしても楽しい」
“ソラマル”で勝つ。「二人三脚」で虎を引き揚げる。
5回表阪神二死 2塁、北條史也内野手は中前適時打を放った=東京ドーム
北條史也内野手がタイムリーで反撃ムードを高めた。
「7番遊撃」で先発。 2点を追う 5回二死 2塁、スライダーをしぶとく中前に運び、ソラーテを迎え入れて 1点差に迫った。「狙い球を頭に入れて反応できました」。ソラーテ加入で遊撃争いが激しさを増す中、 2安打 1打点で猛アピールした。
10回裏巨人一死 1、 2塁、炭谷銀仁朗捕手の打球を好捕した右翼手高山俊外野手=東京ドーム
高山俊外野手がビッグプレーで激闘勝利を呼び込んだ。同点の延長10回一死 1、 2塁。外野は前進守備を敷く。炭谷の大飛球が右翼へ上がる。阪神ベンチの誰もが思わず天を仰いだ。抜けた、やられた…。だが、 7回裏から右翼で途中出場していた高山は、勝負を捨てていなかった。
我を忘れて必死に背走する。最後は身をよじらせてダイブ捕球。「サヨナラ負け」の窮地を救う「ザ・キャッチ」だ。大熱戦を制した矢野監督も「高山のプレーはちょっとあきらめたり、無理かなと思ったら捕れない打球。あきらめずに『何とか捕ってやる』気持ちで捕ってくれた。みんな頑張ったけど、あのプレーは一番大きかった」と絶賛した。
倒れ込みながら好捕した高山俊外野手=東京ドーム
高山も言う。「『いかれた』と思いました。だいぶ前にいた。久しぶりのライトでした。打球が右打者で切れる。どれくらい切れたか分からなかったですが、最後に、追いつけてよかった」。プロ 4年目。福留や糸井らベテランが外野の一角を占める状況だが、狙うのは不動のレギュラーだ。試合前の守備練習。スタメンでなくても筒井外野守備走塁コーチに欠かさずにリクエストする。「後ろに打ってください」。自ら前進した守備位置へ。背走キャッチの練習を怠らず繰り返し、勝負どころで生きた。
劇的勝利に貢献したがニコリともせずに言う。「どっちみち打たないと出られない。それ(守備)はそれで良かったけど、全然、納得していません」。この日は2打数無安打で悔しさを隠さない。燃えたぎる闘志を胸に秘め、定位置だけを奪いにいく。
最後まで球を離さなかった高山俊外野手=東京ドーム
やられた…。誰もが観念した。でも、高山だけは、諦めていなかった。足はフラフラだった。背中越しに落下点を確認した。グラブを差し出す。人工芝に体がたたきつけられた。捕った-。高山の執念が勝っていた。
「(守備位置が)だいぶん、前にきていたので。久しぶりにライト(の守備)で、右打者の切れる打球で、最後、危なかったですけど、捕れてよかったです」
糸井の死球による負傷交代があり、 7回から右翼の守備についた。延長10回。ロッテからトレード移籍後初登板した高野が、一死 1、 2塁とピンチを招いた。炭谷の飛球は右翼へ-。 1点もやれない状況だからこそ、外野は前進守備。万事休すかと思われたが、高山が倒れ込みながら捕った。
「いかれたと思ったけど、捕れてよかった」
右翼での守備は 5日の広島戦(甲子園)以来。今季は主に左翼を任され、出場60試合中、11試合しか守ったことがなかった。まさに虎を地獄からすくい上げた。もちろん、矢野監督からは“MVP”に指名された。
「みんな頑張ったんですけど、その中でも、あのプレーは一番大きいと思います。諦めずに何とか捕ってやるという気持ちで捕ってくれた」
10回裏巨人一死 1、 2塁、炭谷銀仁朗捕手の打球を好捕した高山俊外野手はナインの糸原健斗内野手(手前)の称賛を受ける=東京ドーム
指揮官が常々話している「ファンを楽しませること」「喜ばせること」を日々、体現している。
開幕 2戦目、 3月30日のヤクルト戦(京セラ)の全体練習開始前、誰よりも早くグラウンドに現れ、 1人黙々とロングティーを行っていた。すると、突然バットを置き、球場の見学ツアーに訪れていた少年のもとへと向かった。使っていた球を手渡し、プレゼント-。
受け取った羽田虎太郎くん(12)は「一昨年から高山選手のユニホームを着て応援していました。ファンなので、とてもうれしい」と大喜び。高山も「(喜んでもらえて)よかった」と目を細めた。寡黙だが、優しい。そんな男だから、勝利の女神も、ほれた。
「打たないといけないので。それ(守備は)はそれでよかったですが、全然納得していない」
外野には福留やソラーテがいる。延長11回一死 3塁で浅い左飛に倒れた。悔しかった。結果を残すのみ。レギュラー再奪取へアピールする。
■高山俊外野手の守備について筒井壮外野守備走塁コーチ
「あのプレーが一番大きかった。毎日(守備位置を)前にして『後ろに打ってください』と自発的に練習していた。準備のたまものです」
延長11回、勝ち越し打を放った大山悠輔内野手。伝統の一戦で4番の仕事を果たした=東京ドーム
「4番」が激闘に決着をつけた。延長11回二死 3塁。ここぞの場面で、大山悠輔内野手が決勝打を放った。「打つしかない。(勝負は)打つか、打たないかなので。大事な場面でできてよかったです」。
田口の真っすぐを中前へクリーンヒット。 4時間37分のロングゲームを制して東都の猛虎ファンを沸かせた。
気合十分だった。「あのプレーが一番大きい。チームが救われた。何とか応えたいと打席に入りました」。直前の10回一死 1、 2塁。「サヨナラ負け」かと思われた炭谷の大飛球を「ドラフト1位」の先輩高山が背走曲芸キャッチ。その姿に心打たれた主砲が燃えて打った。
プロ 3年目の24歳。だが、ゲームに入れば年齢は関係ない。常々、大山は言う。「期待だけで終わってしまったら意味がない。結果を出さないといけない」。伝統球団の「4番」を任され、計り知れない重圧と戦っている。「『4番』だから、とかじゃなく。『4番』でも『9番」であっても、試合に出る以上は責任がある」。得点圏打率は「3割4厘」。「勝利打点8」は堂々のチームトップだ。チームを背負う自覚がある。だからこそ…。歓喜の瞬間には、感情が爆発する。
11回表阪神二死 3塁、中前適時打を放った大山悠輔内野手=東京ドーム
矢野監督は「『4番』は本当に苦しい打順。責任ある打順」と若き和製大砲候補を思いやった。続けて「でも、悠輔は何とかそこ(4番)で成長できると思って。アイツとは約束している。姿勢だけはしっかり。4番の姿勢はアイツも頑張ってくれている」と評価した。
素顔は24歳の青年だ。力強化や土台作りを軸にした昨秋の高知・安芸キャンプ。息が切れるほど走り込んだ練習終わりに、甘いモノが欲しくなった。大山は「抹茶オレ、飲もうか」とチームメートに提案。厳しい練習後は甘いモノで癒やしの時間を分かち合った。すごく美味しいと評判になり、芸西村の宿舎ロビーで販売されている「抹茶オレ」が頻繁に売れた逸話もある。プレーだけでなくチーム内の流行も、「4番」が引っ張っている。
負ければ再び「自力V」が消えた一戦で巨人連倒を導いた。残り49試合。「4位」ながら首位巨人に「7.5」差に迫った。「4番」がネバーギブアップを体現し、白星を重ねる意気込みだ。
延長11回表、大山悠輔内野手がタイムリー安打=東京ドーム
俺が「4番」だ! 阪神は延長11回、大山悠輔内野手が勝ち越し打を放ち、巨人に逆転勝ち。 4時間37分の死闘に決着をつけた。新外国人、ヤンハービス・ソラーテ内野手が加入しても、主砲は大山だ。「伝統の一戦」で底力を証明。完全に息を吹き返した虎が大逆襲だ!
バットの先だった。それでも、根性で運んだ。泥臭く。自分が打てば、勝てる。結果に飢えていた。取られて、取り返し、互いに一歩も譲らなかった「伝統の一戦」-。最後に勝負を決めたのは、開幕から「4番」に座り続ける大山のバットだった。
「ひとりひとりがつないでくれたので、なんとか打ちたいな、と思って打席に入りました」
4時間37分の熱戦だった。最後に残っていた投手は島本のみ。 2度の満塁のピンチもしのぎ、たどりついた延長11回だった。梅野の「左翼線2塁打」を皮切りに、二死 3塁。マウンド上の田口を中心に輪ができた。大山勝負か、次のソラーテか…。巨人ベンチの選択は大山だった。もう逃げられないという状況で、外角球を中前に落とした。
「『4番』だから、とかじゃなくて、じゃあ9番だったら打たなくていいのか、というのは違いますし…。『4番』を打っている以上は、そういう責任は必ずあると思うので」
大山悠輔内野手の一打に大喜びの矢野燿大監督(右)。とにかく、ベンチが明るい=東京ドーム
チームトップの「56打点」を残している。どれだけ、それまでの打席で天を仰いでも、どれだけ三振を喫しようとも、勝負どころで打てば許してもらえる。しかも、「伝統の一戦」であれば認めてもらえる。これが「虎の4番」。巨人はこの日、岡本が「4番」から「7番」に下げられ、坂本勇が代役を務めたが、ソラーテが加入しても自分は「4番」に座れる。
「『4番が、4番が』っていいますが、試合に出ている以上は選手として、結果で貢献するだけだと思う」
前日26日、 1軍昇格で即、「決勝2ラン」を放ったソラーテが明らかに戸惑った瞬間があった。一発後、守備につく際のソラーテコール。耳をつんざくような大歓声に“セクシーダンス”が得意な助っ人は必死に応えようとしていたが、どうしていいのかわからなかった。
大山がさりげなく近寄る。“先生役”として帽子をとり、手をあげ、日本式に頭を下げるポーズを教えてあげた。そこから24時間も経たないうちに、今度は自分が主役となった。
打撃だからこそ、誰しも波はある。でも、矢野監督は「アイツとは約束している」と力を込める。「姿勢だけは、しっかり。結果は出ちゃうけど、『4番』の姿勢というのはアイツも頑張ってくれているから」。チームの顔はあくまでも大山。チームの勝利を誰よりも願うからこそ任せている。
延長11回に決勝打を放ちヒーローインタビューを受ける大山悠輔内野手=東京ドーム
「勝ててよかったです。明日も勝てるように頑張ります」
「2連勝」で借金は「3」。負ければ「自力優勝」が消滅する危機だったが、首位・巨人との差を「7.5ゲーム」と縮めた。「7月打率0.304」。一皮むけた大山が勝負の夏を彩る。
★高山俊外野手好捕に刺激
ヒーローインタビューで大山は高山の“ザ・キャッチ”を絶賛した。延長10回一死 1、 2塁で炭谷の飛球に背走し、好捕。「あのプレーが一番大きいと思っていたので、なんとか打ちたいと思って打席に入りました」。2016年に高山が、17年に大山がともに「ドラフト1位」で入団。闘志に火がついていた。
◇データBOX◇
◎…阪神の延長戦は今季14試合目。「1分け挟む2連勝」で、「通算6勝3敗5分け」。
◎…巨人に 2カードぶりの勝ち越し。今季「通算6勝9敗」とした。
※大山成長V打で2連勝!高山前進守備から背走ダイブ!西、5回粘投!高野が初登板上々デビュー!-2へ続く!