９回奇跡の若虎劇場！原口の犠飛などで巨人に追いつき引き分け！辛口の金本監督も粘りのドロー評価！

　阪神が粘って引き分けに持ち込んだ。相手先発のエース菅野に苦しめられ、 8回まで失策絡みの 1得点のみ。 2点をリードされた状況で 9回を迎えたが、抑えの沢村を打ち崩して土壇場で追い付いた。
　ゴメスのソロ本塁打で 1点差に迫り、さらに一死 2、 3塁。ここで前日27日に支配下登録されたばかりの代打原口がプロ初打点となる犠飛を放ち、試合を振り出しに戻した。延長戦は救援陣が好投。宿敵を相手に本拠地甲子園での同一カード 3連敗を何とか阻止。敗れれば借金｢１｣となる状況で踏ん張った。

　12回を抑えグラブを叩く安藤優也投手＝阪神甲子園球場

　超変革ドローや！！　阪神は土壇場の 9回、若虎が躍動して 2点差を追いついた。代打の江越大賀外野手が左前打でチャンスを広げ、前日に支配下登録されたばかりの原口文仁捕手が代打で同点犠飛。甲子園での巨人戦 3連敗とともに借金突入を阻止し、金本知憲監督も｢自信にしてほしい｣と手応えをにじませた。
　若い力の執念を見た。根性を見た。 1勝もできなかった聖地での伝統の一戦。しかし最後の最後に希望の光があった。
　｢そこ( 9回)かな、やっぱり。粘りを見せたと言えば見せたかもね｣

　 9回、安打を放った江越大賀外野手が 2塁にヘッドスライディング。若虎のど根性＆執念で追いついた＝阪神甲子園球場

　 2点差を追いつくドロー。金本監督に笑顔はなかったが、その目は力強かった。｢メッセンジャーと藤浪で勝てなかったのは痛いけど、菅野で負けなかったという見方もある。逆転負け、大敗の後の引き分けだから。そこは前向きに。前を向いていかないと｣。
　 3点を先制され、菅野には敵失で 1点を返すのが精いっぱい。負ければ同一カード 3連敗＆借金｢１｣という危機。腹をくくって、ブレずに起用した若虎たちが救った。
　 1－ 3の 9回。沢村からゴメス弾で 1点を返すと、北條が左前打。 7回に代打でバント失敗を犯した21歳が意地を見せると、大和の犠打で一死 2塁として、代打・江越だ。

　 9回、安打を放った江越大賀外野手＝阪神甲子園球場

　前夜は 2つの守備のミスに見逃し三振で懲罰交代。スタメンから外れた23歳が、初球のフォークを引っ張った。 3遊間を破る一撃。中継の間に 2塁へ頭から滑り込んだ。
　｢本当に何も考えず無我夢中。(好走塁も)何も考えることができませんでした。思うところ？　それは当然。やるだけという気持ちでした｣
　一死 2、 3塁－。この日も直接指導した江越の根性を見届けた金本監督は、さらに前日に支配下登録即昇格させたばかりの原口を代打に送った。24歳も初球 148キロを振り抜く。プロ初打点は中堅への千金の同点犠飛。 3走・北條がほえながらホームを駆け抜けた。

　代打の原口文仁捕手は初球を仕留めて中犠飛。根性の一振りだ＝阪神甲子園球場

　｢初球でした！？　…やばいな…記憶が飛んでます。真っすぐに振りまけないようにしたかった｣
　必死だった。｢ああいう場面で出してもらって感謝しかありません｣。延長10回から 2夜続けてマスクをかぶり、ブルペンで 1、 2度しか受けていないマテオらを必死にリード。ゼロを並べた。
　｢いい根性しとるわ、ああいう場面で初球からいける。度胸を買ってあげたい。(リードも)本当にたいしたもん。たいした成長というか。他の選手も、こういう例もあるんだというのを、励みにしてほしいね｣

　 9回、安打を放ち 2塁へ滑り込んだ江越大賀外野手＝阪神甲子園球場

　抜てきした指揮官が目を細めた。大敗した前夜は｢情けない。ファンに申し訳ない｣と謝罪。それでも｢今年は育てる。俺が怖がったら前へ進めない｣と信念を貫いた。この日も負ければ、どんな罵声、批判を浴びるか－。覚悟の上で、若い選手の底力に賭けた。
　｢選手たちも負けなかったと自信にして、プラスに考えてほしい｣
　ただの 1分けと違う。超変革へ、泥臭く一歩進む、ドローだった。

　 9回に 8号ソロを放ったマウロ・ゴメス内野手。この一撃が同点劇のノロシとなった＝阪神甲子園球場

　舞い上がった白球が、吸い込まれるように左中間スタンドに消えた。マウロ・ゴメス内野手が巻き起こした大歓声が球場の雰囲気を変え、土壇場での同点劇を生んだ。
　試合後は足早にロッカーを出た。勝てなかった悔しさを全身から漂わせたが、窮地を救ったのはＧ砲だ。 2点を追う 9回。先頭で打席に入り、巨人沢村の直球を完ぺきに仕留めた。 2球目の外角 144キロをフルスイング。 4試合ぶりの 8号ソロで、敗戦ムードをかき消した。

　 9回、ホームランを放ったマウロ・ゴメス内野手＝阪神甲子園球場

　金本監督も｢ゴメスが流れを変えた？　まあね｣とうなずくと｢ストレートにずっと差し込まれてたから。ストレートをホームランできたというのが、やっぱり僕の中では大きいけどね｣と納得の表情を浮かべた。
　チームを救い、再び 2冠に躍り出た。 8本塁打はビシエド(中日)、エルドレッド(広島)、筒香(ＤｅＮＡ)、山田(ヤクルト)と並んでリーグ最多タイだ。さらに、今季26打点は単独トップを快走中。福留が 4番に復帰し、厚みが増した打線の中でも存在感が光る。

　 5回、安打を放ったマウロ・ゴメス内野手＝阪神甲子園球場

　前日27日は自身のエラーもあり、 1－11の大敗。今季 2度目の対戦の菅野には 6日の前回対戦(東京Ｄ)で完封負けを喫し、自身も 4打数無安打。“逆風”の中で反発力を見せた。
　 3点を追う 5回先頭で左前打を放ち、追撃への突破口を開いた。相手失策も絡んで 1点目のホームを踏むと、 7回は無死 1塁から 2遊間を破るヒットで出塁。宿敵のエースにくらいつき、 9回に豪快な一発。 4月22日の広島戦(マツダ)以来今季 2度目の 3安打をマークして今季27安打として、開幕してから初めて安打数が打点数(26打点)を“逆転”。一時は 1割台だった打率も 0.273に上昇した。
　負けなかった。窮地で見せた底力。苦しい状況に陥っても、それを打破する力がゴメスにはある。
◆データＢＯＸ◆
◎…ゴメスの猛打賞は 4月22日の広島戦(マツダ、 3安打)以来、今季 2度目、通算16度目。 8本塁打はリーグトップタイで、シーズン42本塁打ペース。26打点もリーグトップで、シーズン 137打点ペース。このままいけば、打点王に輝いた2014年の 109打点を大きく上回る。

　 9回、相川の中前に抜けそうな打球に飛びつき、 2塁へグラブトスした北條史也内野手＝阪神甲子園球場

　ゴメスの荒い鼻息がまだ聞こえる中、途中出場した北條史也内野手が続いた。冷や汗をふきながら投げる沢村の直球を振り抜いた。
　｢いいバッティングができました。ゴメスがホームランを打ってくれて自分は塁に出ようと思っていました｣
　 9回。気迫がにじむ打球が左前で弾む。みずからチャンスメークすると、原口の中犠飛で同点のホームを踏んだ。自分のミスは自分で取り返すしかない。汚名返上に燃えていた。
　 2点を追う 7回無死 1、 2塁。“戦犯”になりかけた。プロ初スタメンだったＤ 6位・板山祐太郎外野手の代打を任された。仕事はバント。送れる技術がベンチで最も高いと判断されて背中を押された。しかし…。

　 1点差に迫った 9回の攻撃では沢村から左前打を放ち、突破口を開いた北條史也内野手＝阪神甲子園球場

　ファウル、バットを引いて見逃しストライク、スリーバント失敗。準備するまでの時間が足りなかったかもしれないが、試合後は｢バントは練習します｣と猛省も忘れない。指揮官は｢それは本人が当然、思っているでしょうし｣と反骨心に期待したことを明かした。
　そのまま 2塁に入って 9回一死 1塁、 2遊間を抜けそうな相川の打球にダイブ。鳥谷に“コロコロ・グラブトス”で 2塁封殺を決めた。さらに延長12回では右中間を破って 3塁を狙う長野を、横田からのカットプレーで 3塁憤死させた。
　｢最後はいい送球ができた。横田もいいところに投げてくれた。周りの声が聞こえていました｣
　勝負の高卒 4年目。下を向いている暇はない。泥臭く、金本監督の超変革についていく。

　 3回表巨人一死 1、 3塁、坂本勇人に左越え 3点先制本塁打を浴びるランディ・メッセンジャー投手＝阪神甲子園球場

　ランディ・メッセンジャー投手が 7回 9安打 3失点で降板した。
　 3回一死から長野、立岡と連打を浴び、坂本に直球を左翼席に運ばれた。その後は要所を締めてゼロを並べたが、 7回の打席で代打を送られた。

　イニングをまたいで10、11回を無失点のマルコス・マテオ投手。躍動感いっぱいに力投した＝阪神甲子園球場

　 1球 1球に地鳴りのような歓声と悲鳴が交錯した。虎の誇る救援陣が、追いつかれた試合を再び勝ち越そうと食らいついてくる巨人打線を封じた。そのリレーの中心にいたのは守護神マルコス・マテオ投手だ。
　｢ランナーは関係ないよ。いつも通り投げようと思っていた｣
　 2イニング目に突入した延長11回、二死 1、 3塁で代打・松本と対峙した。直球でカウント 1－ 2とした 5球目。宝刀スライダーで空振り三振に仕留めた。
　26球を投げ、 3安打されたものの 2回を無失点。 3イニングを投げた 3月31日のヤクルト戦(神宮)以来、今季 2度目のイニングまたぎで力投した。これで 3戦連続無失点。サヨナラ打を食らった16日の中日戦(ナゴヤＤ)の黒星のイメージを払拭しつつある。

　 8回に登板したラファエル・ドリス投手＝阪神甲子園球場

　守護神が復調ムードに入れた理由は“８回の男”ラファエル・ドリス投手の存在だ。19日に同じドミニカ共和国出身の相棒が昇格すると、元気全開。ブルペンの待ち時間にスペイン語で会話できるため｢リラックスした状態でマウンドに上がれている｣という。
　そのドリスは 2点ビハインドの 8回から登板。 150キロを超える剛球で巨人打線をねじ伏せ、 2回 1安打無失点で 9回の同点劇につないで｢きょうは非常に良かった。勝つために自分の仕事をしようと思ったよ｣と胸を張った。
　12回を締めくくったのは好調の安藤だ。先頭の長野に直球を右中間に運ばれたが、右翼・横田－ 2塁・北條の見事な中継プレーで 3塁アウト。このファインプレーに応えて後続を断った。
　｢野手陣に助けてもらったよ。とりあえず、負けなくてよかった｣

　 8、 9回はラファエル・ドリス投手が 1安打無失点に押さえた＝阪神甲子園球場

　ドリスとマテオの“ヒゲ魔神コンビ”に加えて 9試合で防御率0.00の安藤が揃う強力ブルペン陣。頼もしいメンバーが虎の終盤の粘りを支えている。
★マテオのイニングまたぎＶＴＲ
　 3月31日のヤクルト戦(神宮)で、 5－ 5の 9回から登板し、川端、山田、畠山を 3者連続三振。 2イニング目も抑えると、11回にチームが勝ち越し、マテオも続投。一死から四球とボーク、さらに川端の適時 2塁打で同点とされ、なお二死満塁のピンチを招いたが、荒木は遊ゴロに仕留めて逆転は許さなかった。 3回を 1安打 4奪三振 1失点。抑え投手では異例の 3イニングを投げたことについては｢こういう展開で疲れたとは言ってられない｣と話した。

　阪神は28日、 5月10日の対巨人戦(18時・甲子園)で、来場者全員に｢伝統の一戦限定クリアファイル］のプレゼントを実施すると発表した。プレゼントは試合開始 1時間30分後までにご入場の、入場券をお持ちの方が対象。
　クリアファイルは表面に阪神・鳥谷敬内野手と巨人・坂本勇人内野手、裏面に阪神・藤浪晋太郎投手と巨人・菅野智之投手の 4選手が写されている。

　打撃に守備に若手が頑張り、引き分けながらも良い試合ができた。これからも、全員野球でファン皆が待ち望む｢二文字｣に向かって前進だ！　ガンバレ！阪神！我らのタイガース！勝利を掴め！

　2016年 公式戦 日程と結果(04月)

　2016年 公式戦順位表

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