2020年東京五輪の日本代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)は15日、東京・明治神宮外苑発着で行われ、男子は中村匠吾(富士通)が 2時間11分28秒で優勝、服部勇馬(トヨタ自動車)が 8秒差で 2位となって代表に決まった。女子は前田穂南(天満屋)が 2時間25分15秒で 11位、鈴木亜由子(日本郵政グループ)が 3分47秒遅れで 2位に続き、代表入りした。
五輪本番とほぼ同じコースで男女各 2枚の切符を争った。 3位でも、来春までの国内指定大会の結果次第で代表入りの可能性がある。男子の日本記録を持つ大迫傑(ナイキ)は 3位だった。スタートから飛び出した設楽悠太(ホンダ)は終盤失速した。女子は小原怜(天満屋)が 3位に入った。
日本陸上競技連盟は複数の選考会の結果を比較して代表を選考してきたが、基準が曖昧で何度も騒動を引き起こした。地元開催の五輪に向けては誰もが納得できる形を目指し、一定の条件を満たした選手がMGCで競う、一発勝負に近い方式を初めて導入した。
優勝した中村匠吾選手=東京・明治神宮外苑
■中村匠吾選手の話
「一発(勝負)でプレッシャーもあったが、自分自身の力を発揮することだけ考えた。今はとてもうれしい。40キロ付近からの勝負だと考えていた。少し早めのスパートだったが、そこまで余裕を持って走れていたので、しっかり抜け出せていいレースができた」
■服部勇馬選手の話
「 3番目では内定にならないので、必ず 2位に入りたいという強い気持ちを持って走った。(設楽)悠太さんが飛び出して冷静ではいられなかったが、自分自身の走りと状況を見極めて(途中からは)冷静に走れたと思う」
■大迫傑選手の話
「予想通りの展開だったが、後半に脚の力が残っていなかった。最後抜かれたのは非常に残念。前の中村、服部は力をためていた。その点は完敗。最低限の 3位ということで、良くはないが、次につなげていきたい」
2位の服部勇馬選手。右は3位の大迫傑選手=東京・明治神宮外苑
■前田穂南選手の話
「優勝を狙っていたのですごいうれしい。狙っていたタイムよりは少し遅いが、東京五輪の切符をしっかり取った。世界で戦う準備をこれからしたい」
■鈴木亜由子選手の話
[率直に良かったという安心感がある。本当に緊張した。まずは五輪の席を確保したので、今回のレースの課題をしっかりと五輪につなげられるように頑張りたい」
■小原怜選手の話
「練習量としてはやってきた自信があったのでなんとか( 2位だった鈴木を)捕まえたいと思った。脚がつりそう、ちぎれそうと思っていた。最後まで諦めずに、首の皮一枚でつながる結果だった」
<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ
中村匠吾(26=富士通)が 1位、服部勇馬(25=トヨタ自動車)が 2位となり五輪出場が内定した。大迫傑(27=ナイキ)は 3位で、「MGCファイナルチャレンジ」と呼ばれる指定の 3大会(福岡国際マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン)で、派遣設定記録( 2時間 5分49秒)を突破した選手がいない場合に代表権を得る。
3位でゴールし膝に手をつく大迫傑選手=明治神宮外苑
大迫傑は最後に力尽きて 3位。「力負け。真摯に受け止めたい」と振り返った。
残り 2キロを切ったあたりで一旦は先頭に並びかけたが、再び引き離され、「足が残っていなくてきつかった。最後に短い坂で出られてしまった」。 2位争いでも後れを取った。
東京オリンピック(五輪)出場は当確とならなかったが、「MGCファイナルチャレンジ」と呼ばれる指定 3大会(福岡国際マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン)で、設定タイム( 2時間 5分49秒)を突破した選手がいなければ代表権を得る。
自身のファイナルチャレンジ出走については「コーチと相談してしっかり考えていきたい」と話した。
25キロ過ぎで首位を独走する設楽悠太選手=銀座中央通り
設楽悠太(27=ホンダ)は、会見で宣言したとおり、スタートから飛び出した。一時は、第 2集団に 2分以上の差をつけ、35キロまでは独走状態。しかし、35キロ過ぎ、がくっとスピードが落ち、37キロ過ぎに、第 2集団にのみ込まれ、そのままあっという間に抜き去られた。
結果は14位で、タイムも 2時間16分 9秒と惨敗。それでも「やりきった」と言葉少なに語った。足に疲れを感じたのは「25キロです」。何とか踏みとどまろうとしたが、そこら辺は「覚えていない」。レースを終えて「休みたいです」。
14着でゴールし険しい表情を見せる設楽悠太選手=明治神宮外苑
まだ、設定記録、 2時間 5分49秒を破り、東京五輪代表 3枠目を狙う方法もあるが「今は考えたくない」。「これまでの中で、 1番、きつい経験か」という問いには「そうですね、はい」と答えるのが精いっぱい。
泥臭さと無縁で、その振る舞いから「宇宙人」、「異端児」と呼ばれた設楽だが、その時は、普通に疲労とショックの色が隠せなかった。
<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ
東京オリンピック(五輪)出場を懸け10人が出場。前田穂南(23=天満屋)が 2時間25分15秒で優勝。 2位は鈴木亜由子(27=日本郵政グループ)で 2人が東京五輪に内定した。 4秒差で 3位小原怜(29=天満屋)。五輪代表の残り 1人は「MGCファイナルチャレンジ」と呼ばれる指定の 3大会(さいたま国際マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソン)で、派遣設定記録( 2時間22分22秒)を突破した選手。その該当者がいない場合、MGCの 3位の小原が代表権を得る。なおこの派遣設定記録は17年 8月以降のMGC派遣設定記録対象期間で最も速かった松田の 2時間22分23秒を上回るタイム。
20年東京オリンピックのマラソン代表( 3枠)の 2枠を懸けたMGCで、前田穂南と鈴木亜由子が代表権を獲得した。15キロ過ぎに前に出た前田はその後、増田明美さんから「ど根性フラミンゴ」と名付けられた長い足を使って独走し、 2時間25分16秒でゴールに駆け込んだ。前田を懸命に追った鈴木が小原怜にわずか 4秒差で 2位に入った。
身長 166センチ、手足の長い前田が先頭で、いちょう並木に戻ってきた。17年 8月の北海道を制して女子一番乗りでMGC出場を決め、計画的に強化して鍛えた足はリズムよく動いた。「どういう状況でも対応できるように自分のリズムで走りたい」。 2位との差は20キロ地点で 2秒、24キロの芝公園の押し返し地点で30秒。20キロ以上独走してゴールを駆け抜けて笑みを浮かべた。
「しっかり優勝狙っていたのでうれしいです。自分でいくと決めていた。最後まであきらめず粘って走った」。
大阪薫英女学院高時代は全国高校駅伝は 3年間控え。15年に天満屋に入り、花開いた。17年 1月に初マラソン。 2戦目でMGCの切符を獲得すると、18年 1月の大阪国際は自己記録の 2時間23分48秒で 2位に入った。ここ 2戦は故障や悪条件に苦しんだが、天満屋の看板を背負った23歳は、力強く初の五輪となる東京大会の出場権を得た。「これから世界で勝負していけるように力をつけたい」。もちろん、今はまだ通過点にすぎない。
26キロ付近をトップで通過する前田穂南選手=明治神宮外苑
20年東京オリンピックのマラソン代表( 3枠)の 2枠を懸けたMGCで、前田穂南と鈴木亜由子が代表権を獲得した。15キロ過ぎに前に出た前田はその後、増田明美さんから「ど根性フラミンゴ」と名付けられた長い足を使って独走し、 2時間25分16秒でゴールに駆け込んだ。前田を懸命に追った鈴木が小原怜にわずか 4秒差で 2位に入った。
身長 166センチ、手足の長い前田が先頭で、いちょう並木に戻ってきた。17年 8月の北海道を制して女子一番乗りでMGC出場を決め、計画的に強化して鍛えた足はリズムよく動いた。「どういう状況でも対応できるように自分のリズムで走りたい」。 2位との差は20キロ地点で 2秒、24キロの芝公園の押し返し地点で30秒。20キロ以上独走してゴールを駆け抜けて笑みを浮かべた。
大阪薫英女学院高時代は全国高校駅伝は 3年間控え。15年に天満屋に入り、花開いた。17年 1月に初マラソン。 2戦目でMGCの切符を獲得すると、18年 1月の大阪国際は自己記録の 2時間23分48秒で 2位に入った。ここ2戦は故障や悪条件に苦しんだが、天満屋の看板を背負った23歳は、力強く初の五輪となる東京大会の出場権を得た。
2位で、リオデジャネイロ大会に続く五輪出場権を得たのは27歳の鈴木だ。昨年 8月、北海道での初マラソンで優勝。今年 2月の初ハーフマラソンは「日本歴代3位」のタイムを出した。「レースを淡々と走って、しっかり勝負どころを押さえたい」。前田には離されたが、トラックで培ったスピードを含めた総合力への自信は揺るぎなかった。リオデジャネイロ大会では左足の違和感で 1万メートルを欠場し、5000メートルは予選落ち。「ちゃんと力が出せれば結果は出る」と臨んだ 2度目のマラソンで、五輪に再挑戦する権利を得た。
女子 1位でゴールする前田穂南選手=明治神宮外苑
レース序盤はハイペースを刻んだ。「若さあふれる走りをしたい」と意気込んだ最年少の22歳、一山が飛び出した。 1キロは 3分17秒、 5キロは16分31秒と 2時間20分を切ろうかというスピード。スタート直後に野上、 1キロすぎに松田、 5キロ付近で岩出、 7キロすぎに上原が遅れはじめた。
9キロすぎには前田がリードする先頭集団は7人となった。12キロすぎにはレースを引っ張った一山が遅れはじめ、14キロ付近からは、じわじわと松田が離される。浅草・雷門を通過し、15キロすぎの給水ポイントから先頭集団は 5人になった。17キロすぎには福士の口が開き、離されはじめた。18キロ手前では安藤が遅れはじめた。前田、鈴木、小原。19キロ手前では小原が後退しはじめた。前田が飛ばし、鈴木が追う展開となった。
20キロ通過タイムは先頭の前田が 1時間 7分27秒、 2秒差で鈴木、11秒差で小原、23秒差で福士、25秒差で安藤、52秒差で松田。35キロ地点で前田は 1時間58分53秒、鈴木は 2分差、小原は 2分39秒差、松田は 3分31秒差。蒸し暑さが増す中、最終盤に突入していた。
6着でゴールする一山麻緒選手=明治神宮外苑
今年マラソンデビューした出場最年少22歳の一山麻緒(ワコール)が、スタートから一気に飛び出した。最初の 5キロが16分31秒という 2時間20分を切るハイペースになったことで、 2時間22分23秒の記録を持つ優勝候補の松田瑞生(24=ダイハツ)が 1.5キロすぎに遅れ始めるなど、出場10人の争いに混乱を生じさせた。
後半から遅れて 6位に終わったが「集団を小さくするために最初からハイペースで前に出て走ろうと思いましたが、ちょっと早すぎました。抑えようと思ったのですが、体が動いていたので無理にストップをかけずに、そのままいった。離れてから余裕がなくなりましたが、マラソン 3回目で、積極的に走れたのは今後のいい経験になった」と、力を出し切ったレースに悔いはなさそうだった。
笑顔でゴールする 7位の福士加代子選手=明治神宮外苑
五輪4度出場の福士加代子(37=ワコール)は 7位に終わった。スタートからハイペースの先頭集団の後方を粘り強く走ったが、17キロすぎに遅れ始めると後半はズルズルと後退した。「(先頭集団の) 4番目になったときに少し休んだら離れて、追い付けなくなった。残念でした」と、レース後は一瞬の気の緩みを悔しがった。
7位でゴールし笑顔の福士加代子選手=明治神宮外苑
五輪にはトラックで 3度出場し、 4度目の前回16年リオデジャネイロ大会はマラソンで14位。 5度目の五輪はまだ諦めていない。「ゴールしてよかったよ。東京五輪の試走だと思えば。次、 2時間22分22秒だよね。でも切れないだろうなあ。これから練習頑張ります」。16年の大阪国際女子で 2時間22分17秒で優勝した実績もある。37歳の挑戦はまだ続く。