毎年読売新聞東京本社主催,栃木県ウォーキング協会主管で行われている「みずウォーク 渡良瀬遊水地大会」の舞台となっている「人造湖・渡良瀬遊水地」を、「ラムサール条約湿地」への登録に同意する最終意見書を環境省に提出した」と聞いて、天然湖などで無くても良いのか?と思ってしまいました。
その記事を何紙か紹介します。
〔朝日新聞 環境〕
ラムサール条約に渡良瀬・大沼など9湿地 新たに登録へ
水鳥などの生息地として国際的に重要な湿地の保全を目的とするラムサール条約に、新たに国内 9カ所が登録される見通しとなった。 7月にルーマニアで開かれる条約の締約国会議にあわせ登録される。環境省が10日、中央環境審議会野生生物部会に報告した。
新たに登録されるのは、大沼(北海道)、渡良瀬遊水地(茨城、栃木、群馬、埼玉)、立山弥陀ケ原・大日平(富山)、中池見湿地(福井)、東海丘陵湧水湿地群(愛知)、円山川下流域・周辺水田(兵庫)、宮島(広島)、荒尾干潟(熊本)、与那覇湾(沖縄)。
このうち、栃木など 4県にまたがる渡良瀬遊水地はヨシが群生する本州最大級の湿地が広がる。兵庫県豊岡市の円山川下流域・周辺水田は、絶滅危惧種のコウノトリの生息地となっているほか、ヒメシロアサザなど貴重な植物も生育している。熊本県荒尾市の荒尾干潟は、絶滅危惧種のクロツラヘラサギやツクシガモなどの渡り鳥の中継地や越冬地となっているほか、貝類など多様な生物が生息している。
今回の新規登録で、国内の登録湿地は46カ所となる。
〔上毛新聞ニュース〕
●ラムサール条約に渡良瀬遊水地登録へ
群馬、栃木、茨城、埼玉 4県にまたがる渡良瀬遊水地について、地元の 4県と 6市町が、国際的に重要な湿地と認められる「ラムサール条約湿地」への登録に同意する最終意見書を環境省に提出したことが8日、分かった。登録準備は国が主導しており、地元がそろって賛同したことで、7月の国際会議での正式登録が事実上確定した形。関係者は観光振興や地域活性化につながると期待する。遊水地は足尾鉱毒事件を機に造成された歴史があるだけに、環境破壊と保全という両面の象徴的存在として脚光を浴びそうだ。
地元の 6市町は板倉町、栃木県の栃木市、小山市、野木町、茨城県古河市、埼玉県加須市。 4県の知事と各市町長は今月 2日付で意見書を提出した。国は10日に開く中央環境審議会野生生物部会で、登録の前提となる遊水地での国指定鳥獣保護区を設定。月内にも同条約事務局に申請手続きし、 7月にルーマニアで開かれる条約締約国会議(COP11)で正式登録される。県内での登録は尾瀬国立公園に次いで 2例目となる。
遊水地は治水機能を高める造成が一部で続いているほか、ヨシ焼きや水上スポーツ、花火大会などの利用も盛んだが、環境省は「登録後も治水目的の造成や利用は従来通り」と説明。従来の各県の銃猟禁止区域から、国指定の鳥獣保護区へと移行する以外に、新たな規制は生じないという。
渡良瀬遊水地は足尾鉱毒事件の鉱毒を沈殿させ無害化するなどの目的で1940年に造成を開始。渡良瀬川など 3河川の合流地点であることから治水機能を高め、現在も降雨時は水をためて徐々に下流の利根川に放流している。
総面積3300ヘクタールのうち、登録するのは湿地や貯水池など2861ヘクタール。植物 700種が自生し、鳥類 140種が生息したり、越冬している。このうち絶滅危惧種は50種以上とされる。
全国53市町村が加盟するラムサール条約登録湿地関係市町村会議(事務局・那覇市)によると、登録後に国際的に知名度が高まったことで、国内外からの観光客が増えたり、住民が湿地の価値を再確認して地域ぐるみの保全活動につながった事例は多いという。
板倉町は「登録により町を訪れる人が増え、地域活性化のきっかけにしたい」と期待している。
〔下野新聞「SOON」〕
渡良瀬遊水地ラムサール条約登録へ 要件そろう
本県など 4県 4市 2町にまたがる渡良瀬遊水地のラムサール条約登録が、 7日までに確実な情勢となった。登録の条件である鳥獣保護区指定について、10日の環境省中央環境審議会鳥獣保護部会でめどが立つ見通しで、同省が示す登録要件がすべてそろう。国内候補地として6月にも官報で告示されるとみられ、 7月にルーマニアで開かれるラムサール条約締約国会議(COP11)で正式決定される見込み。
ラムサール条約の登録要件は(1)国際的に重要な湿地であること(2)国の法律により将来にわたり自然環境の保全が図られていること(3)地元自治体などからの登録の賛意が得られていること-の三つ。
同遊水地をめぐっては、地元住民から治水を不安視する声が出されていたが、河川法を適用し従来通りの治水事業が行われることや、治水事業の確実な実施などを条件に理解が得られたことから、昨年末までに周辺自治体の賛意がすべて出そろっていた。
10日の中央環境審議会鳥獣保護部会では、残された最後の要件である法律による鳥獣保護区指定について諮問される見通し。
★ラムサール条約について
・ラムサール条約とは、別名:特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約。
・ラムサール条約概要:湿地と生息する動植物を保全し、賢明な利用を促進する法律。日本は33カ所が登録されている。
湿原や河川、湖沼といった湿地と、生息する動植物を保全し、「賢明な利用」を促進する法律。世界約 150カ国が加入し、日本は1980年に加入した。
日本語での(日本国加入以降の)正式題名は『特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(英:Convention on Wetlands of International Importance Especially as Waterfowl Habitat)。』日本での法令番号は昭和55年条約第28号。
「ラムサール条約」は、この条約が作成された地であるイラン・イスラム共和国(通称イラン)のカスピ海沿岸の都市ラムサールにちなむ略称・通称である。
日本の登録湿地は平成17年末現在、釧路湿原など33カ所にのぼる。世界遺産は非常に厳しい条件をクリアして決議して登録され、保全が義務付けられる一方、ラムサール条約は締約国が指定した地域を登録し、保全と同時に湿地の恵みを産業や生活に活用することを推奨している。
★渡良瀬遊水地について
渡良瀬遊水地は、足尾鉱毒事件による鉱毒を沈殿させ無害化することを目的に渡良瀬川下流に作られた遊水池。
渡良瀬川に思川と巴波川の2つの川が合流する地点の湿地帯全体が堤によって囲われ遊水池となっている。
足尾鉱毒事件の発生当時は、鉱毒対策が目的で設けられたのではなく、洪水防止が目的とされたが、1903年の政府の第二次鉱毒調査委員会が渡良瀬川下流部に遊水池を設置する案を提示したことを受けて造成されており、鉱毒対策目的であることは明白であった。
法令上は、国土交通省が管轄する河川の内部になっている。足尾鉱毒事件から100年近く経った現在では鉱毒は減少し、主に治水と利水のための地域になっている。ただし、減少したのは上流から新たに流れてくる鉱毒の量であって、遊水地の土壌には2010年現在でも銅などの鉱毒物質が多く含まれている。
最寄り駅は東武日光線柳生駅、新古河駅、板倉東洋大前駅および藤岡駅。
★足尾鉱毒事件について
19世紀後半の明治時代初期から栃木県と群馬県の渡良瀬川周辺で起きた足尾銅山の公害事件。原因企業は古河鉱業(現在の古河機械金属)。
銅山の開発により排煙、鉱毒ガス、鉱毒水などの有害物質が周辺環境に著しい影響をもたらし、1890年代より栃木の政治家であった田中正造が中心となり国に問題提起するものの、精錬所は1980年代まで稼働し続け、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震の影響で渡良瀬川下流から基準値を超える鉛が検出されるなど、21世紀となった現在でも影響が残っている。
これによると、天然湿原帯とは書かれていない。ただ、「保全と同時に湿地の恵みを産業や生活に活用すること」と有り、天然で有っても無くても構わないと解釈できる。
従って、ラムサール条約に渡良瀬遊水地が正式登録されてもおかしく無いだろう。と、言える。
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4県と 6市町が渡良瀬遊水地を、「ラムサール条約湿地」への登録に同意する最終意見書を環境省に
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