●今季限りで現役引退する藤川球児投手(40)が、自身の引退試合となる10日巨人戦(甲子園)の試合前にサプライズを受けた。おなじみの登場曲「リンドバーグ」の「every little thing every preciou thing」が流れる中で藤川がグラウンドに現れると、「引退記念Tシャツ」を着用したチームメートやスタッフがお出迎え。自身もシャツを着た姿で笑顔で近づいた。さらに選手会長の梅野から「LEGENDARY CLOSER(伝説の守護神)」と書かれたパネルが手渡されると、大きな拍手で労われた。球児伝説の秘密はどこにあるのか。あれほどの直球を投げるのだから、フィジカルで特別なものがあるはずだ。この仮説は結論に至らなかった。藤川の個人トレーナーを務める檜作英太氏(46)は言う。言える繊細さを持つ。投球にもその感覚は生かされる。 1球投げて思う場所に行かなければ、瞬時に体の動きを把握し修正できる。それは入念な復習に基づいたもの。試合が終わると、その日のうちに 1人で自らの映像をチェックする。感覚が残っているうちに映像と記憶をすり合わせ、また次の登板へ。「火の玉ストレート」が生まれた土台には、人知れぬ準備と繊細な感覚にあった。マウンドへ上がれば、もう後ろを向くことはない。調子が良くても打たれれば、悪くても抑えることもある。野球の不思議や面白さ全てを理解する。一瞬、1球にすべてをかけてきた守護神だった。
●巨人が初回に 3点を奪った。一死 1、 2塁から岡本和真内野手(24)の打球を 2塁手小幡竜平内野手(20)が適時失策。その後も丸佳浩外野手(30)の「適時2塁打」などで 2点を加えた。巨人は先発畠世周投手(26)が 3回無失点に抑えて、「2番手」戸郷翔征投手(20)に継投した。阪神は 6回を終えて無安打無得点と打線が精彩を欠いた。巨人が継投策で阪神打線をねじ伏せた。 7回には押し出し四球で 1点を追加。今季の対戦成績を「16勝8敗」とした。「2番手」戸郷が「9勝」目。阪神青柳晃洋投手(26)は「9敗」目を喫した。藤川球児投手(40)の「引退試合」で 5回までノーヒットと抑え込まれた阪神打線は、 6回にようやく近本光司外野手(25)が出塁したが得点に結びつけられなかった。 6回一死から「3番」近本が敵失で出塁。だが「4番」ジェリー・サンズ外野手(33=キウム・ヒーローズ)が三振に倒れ、盗塁を試みた近本も 2塁でアウトになり、三振ゲッツーとなった。「本塁打王」を争う大山悠輔内野手(25)を「1番」に起用した一戦。 1回表に適時失策絡みで 3点を先制されると、 3回まで巨人先発畠に無安打投球を許し、 4、 5回も「2番手」戸郷の前に無安打。 6回もヒットが出ず無安打が続いた。阪神先発の青柳晃洋投手が「2年連続の規定投球回数」に到達した。この日までに残り 4回 1/3としていたが、今季最終先発でクリア。 2回からは持ち味の打たせて取る投球で立ち直り、 3回まで 2イニング連続で 3者凡退。 4回も先頭打者を出すが併殺で切り抜け、 5回先頭の「2番」松原を 2ゴロに打ち取って規定投球回数に到達した。 5回を 5安打 3失点、球数 101球で降板し、今季「8勝」目はならなかった。
●「本塁打王」を争う大山悠輔内野手は「4打数無安打」に終わった。 1回は遊飛、 3回は捕邪飛、 5回も捕邪飛に倒れ、 8回一死 2塁でも 3ゴロに仕留められた。シーズンは残り 1試合となり、「逆転本塁打王」が難しい状況となった。
●引退試合を迎えた藤川球児投手が試合前のセレモニーに登場した。地元の「高知くろしお感動大賞」の表彰式が行われ、浜田省司高知県知事(57)から賞状を受け取った。相手巨人からは、先日「2000安打」を達成した坂本勇人内野手(31)が藤川に花束を渡した。記念すべき始球式は、父の背番号「22」をつけた藤川の長男が務めた。捕手は藤川自身が務め、親子バッテリーに球場からは大きな応援が送られた。ミットを構える藤川はマウンドへ肩の力を抜くようなジェスチャーを送り、ボールは外角にノーバウンドで届いた。藤川は受けたボールを笑顔で長男に投げ返し、球場全体の応援に 2人で応えた。矢野燿大監督(51)が藤川の「最後の 1球」を受けた。かつての女房役、そして最後の指揮官として、「ピッチャー、藤川」をコール。最後の登板を見届けた。「引退セレモニー」ではバッテリーを組み、固い絆で結ばれた 2人の物語はひとまず幕を閉じた。
●「引退試合」を迎えた藤川球児投手が、現役最後のマウンドでに上がった。巨人原辰徳監督(62)も粋な采配で応えた。先頭打者には先日、「2000本安打」を放った坂本を代打に送った。12球の全球「火の玉ストレート勝負」で坂本、中島宏之内野手(38)から 2三振を奪った。プロ22年目、「日米通算811試合目」の登板。背番号「22」が最も似合う 9回にコールされた。大型ビジョンにブルペンが映し出され、救援陣に見送られた。今季最多21392人が詰めかけた甲子園。登場曲「every little thing every precious thing」(リンドバーグ)が流れる中、笑顔でリリーフカーに乗ってグラウンドへ。マウンドでは矢野監督が出迎え、抱擁を交わした。内野陣とはグータッチを交わし、この回から途中出場した捕手梅野隆太郎(29)へ投球練習を行った。「日米通算15955球」を投げ終え、計「1252三振」を奪った右腕は、最後のマウンドを後にした。さらば、「火の玉ストレート」-。藤川球児投手が10日の巨人戦(甲子園)で「引退試合」に臨んだ。 9回に登板。巨人の代打坂本から三振を奪うなど12球の直球勝負で 1イニングを 3者凡退に抑えた。「日米通算245セーブ」を記録した右腕が、タテジマに別れを告げた。
●「JFK」の生みの親である阪神元監督の岡田彰布氏(62)も甲子園に駆けつけた。花束贈呈で姿を見せると、スタンドから大きな歓声が起こった。マウンド上では、藤川とガッチリ握手を交わした。
●藤川球児投手の「引退試合」に際し、盟友 2人が言葉を寄せた。藤川とともに「JFK」と名付けられたジェフ・ウィリアムス氏(48=阪神駐米スカウト)と久保田智之氏(39=阪神プロスカウト)。思い出やエピソードを語った。熱い思いがこみ上げた。阪神プロスカウトの久保田智之氏にとって藤川は特別だった。背番号「22」の存在が自身の野球人生に大きな影響を及ぼした。05年、久保田氏は「守護神」として 7回藤川からの継投を締めくくり、「27セーブ」を挙げた。久保田氏は今後も野球界で活躍する藤川の姿を期待した。良き仲間であり、良きライバル-。これからも 2人の関係は変わらない。
●元プロ野球選手の清原和博氏(53)が今季限りで現役を引退する藤川球児投手にビデオメッセージを贈り、あの「事件」を振り返った。試合後に行われた「引退セレモニー」に登場。ねぎらった。
●今季限りで現役引退する藤川球児投手が新設される「スペシャルアシスタント(SA)」に就任することが10日、分かった。この日までに球団が要請し、受諾した。ユニホームを着て直接選手を指導することはないが、新外国人調査など編成面のアシストに加え、球団の野球振興に関わる活動のサポートなど広範囲の働きが期待される。これまで球団が引退直後の選手に特別職の就任を要請した例はなく異例のポスト就任となる。藤川は実績と知名度のみならず、その発信力も抜群。野球振興の面においても大きな力になりそうだ。
記事をまとめてみました。
練習前、ナインと記念写真に納まる藤川球児投手=阪神甲子園球場
今季限りで現役引退する藤川球児投手が、自身の引退試合となる10日巨人戦(甲子園)の試合前にサプライズを受けた。
おなじみの登場曲「リンドバーグ」の「every little thing every preciou thing」が流れる中で藤川がグラウンドに現れると、「引退記念Tシャツ」を着用したチームメートやスタッフがお出迎え。自身もシャツを着た姿で笑顔で近づいた。さらに選手会長の梅野から「LEGENDARY CLOSER(伝説の守護神)」と書かれたパネルが手渡されると、大きな拍手で労われた。
ボードの裏に書かれたナインのサイン=阪神甲子園球場
パネルの裏面にびっしりと書かれた選手らのサインをじっくり見ると、矢野監督、藤川を囲むようにセンター付近で記念撮影。バックスクリーンには「球児さん 22年間お疲れ様でした」と映し出されていた。
藤川は試合前練習を開始、中継ぎ陣とウオーミングアップを行うなか、藤浪と言葉を交わす場面もあった。
キャッチボールの相手役は片山ブルペン捕手。長い間ブルペンでボールを受けてくれた女房役と、笑顔で“最後のキャッチボール”を行った。ダッシュなどで調整を終えると、スタッフらに写真撮影を求められながら午後3時過ぎにグラウンドを後にした。
藤川球児投手=阪神甲子園球場 (2020年10月28日撮影)
藤川球児投手が10日、引退試合となる巨人戦(甲子園)で現役ラストマウンドに上がる。最後の「火の玉ストレート」を心待ちにする虎党を思い、「ファンの方の気持ちを大切にしながら、現役生活を終わりたい」と心境を明かした。「プロ22年の集大成」。魂を燃やし、興奮と感動の最終回を演じる。
◇ ◇ ◇
球児伝説の秘密はどこにあるのか。あれほどの直球を投げるのだから、フィジカルで特別なものがあるはずだ。この仮説は結論に至らなかった。「よく聞かれたんですけど、特別にどの選手よりも体のここが優れてるっていうのは、僕は感じたことないんですよ」。藤川の個人トレーナーを務める檜作英太氏は言う。ただし、話はそれだけで終わらない。こう続けた。「 1つあるとしたら、体の変化に自分自身ですごく敏感に感じられるんです」。ごく小さな変化に敏感で、大きなけがにつながる前に自分で止めることができる。檜作氏らトレーナーが気づく前に「ここがちょっと気になるんです」と、言える繊細さを持つ。
試合前の練習前、藤川球児投手はナインらと笑顔で記念撮影をする=阪神甲子園球場
投球にもその感覚は生かされる。「映像を見なくても、自分の体が今どういうふうになったっていうのを、投げながらにして分かる選手なんですよね」。 1球投げて思う場所に行かなければ、瞬時に体の動きを把握し修正できる。それは入念な復習に基づいたもの。試合が終わると、その日のうちに 1人で自らの映像をチェックする。感覚が残っているうちに映像と記憶をすり合わせ、また次の登板へ。「握りとかもあると思いますけど、やっぱり体に対する感覚が非常に優れてると思います」。「火の玉ストレート」が生まれた土台には、人知れぬ準備と繊細な感覚にあった。
マウンドへ上がれば、もう後ろを向くことはない。「あの上に立ったら全力でやる。調子ええとか悪いとか関係ない。その時の全力を出すだけ」。それは藤川の信念だ。対戦は相手があってのもの。調子が良くても打たれれば、悪くても抑えることもある。野球の不思議や面白さ全てを理解する。登板後のトレーナー室で、藤川が「言い訳」を口にすることはなかったという。一瞬、1球にすべてをかけてきた守護神だった。
<阪神 0- 4巨人>◇24回戦◇阪神 8勝16敗 0分◇10日◇阪神甲子園球場
巨人が初回に 3点を奪った。一死 1、 2塁から岡本の打球を 2塁手小幡が適時失策。その後も丸の「適時2塁打」などで 2点を加えた。
巨人は先発畠が 3回無失点に抑えて、「2番手」戸郷に継投した。阪神は 6回を終えて無安打無得点と打線が精彩を欠いた。
巨人が継投策で阪神打線をねじ伏せた。 7回には押し出し四球で 1点を追加。今季の対戦成績を「16勝8敗」とした。「2番手」戸郷が「9勝」目。阪神青柳は「9敗」目を喫した。
1回裏阪神無死、遊飛を打ち上げる大山悠輔内野手=阪神甲子園球場
藤川球児投手の「引退試合」で 5回までノーヒットと抑え込まれた阪神打線は、 6回にようやく近本が出塁したが得点に結びつけられなかった。
6回一死から「3番」近本が敵失で出塁。だが「4番」サンズが三振に倒れ、盗塁を試みた近本も 2塁でアウトになり、三振ゲッツーとなった。
「本塁打王」を争う大山悠輔内野手を「1番」に起用した一戦。 1回表に適時失策絡みで 3点を先制されると、 3回まで巨人先発畠に無安打投球を許し、 4、 5回も「2番手」戸郷の前に無安打。 6回もヒットが出ず無安打が続いた。
1回裏阪神無死、大山悠輔内野手は遊飛を打ち上げる、左は畠世周投手=阪神甲子園球場
藤川球児投手の引退試合で畠、戸郷ら巨人の若手 5投手に今季ワーストの「1安打0敗」を喫した。
1回の 3失点は失策が絡み、 7回の失点は押し出しを含む 3連続四球によるもの。攻守で精彩を欠き、今季の巨人戦は「8勝16敗」で終わった。 8回一死から中谷の安打が出るまで無安打で、矢野監督は「最後勝っている状態で球児を投げさせてあげたたかったけど…。ちょっと寂しい」と本音をのぞかせた。打線は「本塁打王」争いで巨人岡本を「3」差で追う大山を「1番」起用。快音は出なかったが、矢野監督は「力むなという方が無理」とし、明日も「1番」かの問いに「うん、『1番』で」と11日の今季最終DeNA戦に期待した。
力投する阪神先発の青柳晃洋投手=阪神甲子園球場
阪神先発の青柳晃洋投手が「2年連続の規定投球回数」に到達した。この日までに残り 4回 1/3としていたが、今季最終先発でクリア。 5回を 5安打 3失点、球数 101球で降板し、今季「8勝」目はならなかった。
藤川の引退試合となったこの日の幕開けは、苦しい結果となった。一死 1塁から、「3番」重信に右前打され 1、 2塁とピンチ拡大。「4番」岡本の放った痛烈な当たりを、 2塁手小幡がゴロ処理に入ったかに見えたが、まさかのトンネル。この失策の間に走者が生還して先制点を献上するなど、初回だけで40球を費やし、 3点を奪われた。
だが、 2回からは持ち味の打たせて取る投球で立ち直り、 3回まで 2イニング連続で 3者凡退。 4回も先頭打者を出すが併殺で切り抜け、 5回先頭の「2番」松原を 2ゴロに打ち取って規定投球回数に到達した。
5回裏阪神二死、捕邪飛に倒れる大山悠輔内野手=阪神甲子園球場
「本塁打王」を争う大山悠輔内野手は「4打数無安打」に終わった。
リーグトップの巨人岡本に「3本」差の「28本塁打」で迎えた一戦。 1打席でも増やすため、プロ 1年目の17年 8月16日広島戦以来となる「1番」でスタメン起用された。
1回は遊飛、 3回は捕邪飛、 5回も捕邪飛に倒れ、 8回一死 2塁でも 3ゴロに仕留められた。
シーズンは残り 1試合となり、「逆転本塁打王」が難しい状況となった。
引退試合を迎えた藤川球児投手が試合前のセレモニーに登場した。地元の「高知くろしお感動大賞」の表彰式が行われ、浜田省司高知県知事から賞状を受け取った。相手巨人からは、先日「2000安打」を達成した坂本が藤川に花束を渡した。
始球式で長男からのボールを受ける藤川球児投手=阪神甲子園球場
記念すべき始球式は、父の背番号「22」をつけた藤川の長男が務めた。捕手は藤川自身が務め、親子バッテリーに球場からは大きな応援が送られた。ミットを構える藤川はマウンドへ肩の力を抜くようなジェスチャーを送り、ボールは外角にノーバウンドで届いた。藤川は受けたボールを笑顔で長男に投げ返し、球場全体の応援に 2人で応えた。
「高知くろしお感動大賞」の表彰を受ける藤川球児投手=阪神甲子園球場
矢野燿大監督が藤川の「最後の 1球」を受けた。 かつての女房役、そして最後の指揮官として、「ピッチャー、藤川」をコール。最後の登板を見届けた。「引退セレモニー」ではバッテリーを組み、固い絆で結ばれた 2人の物語はひとまず幕を閉じた。
◇ ◇ ◇
現役時代、「火の玉ストレート」を受けてきた矢野監督のミットに、藤川のラストピッチが吸い込まれた。笑顔でしっかりと受け止めたが、セレモニー後、指揮官の目は潤んでいた。
矢野監督 球児のストレートを一番多く受けられたのは自慢。本当に全身全霊、タイガースのためにやってくれた。感謝の気持ちしかない。一言では収まらない。幸せな時間でした。
あのときから10年の時を経た。10年 9月30日。矢野監督の「現役引退試合」だった一戦で 9回に藤川が逆転弾を浴び、出番が消えた過去があった。
「引退セレモニー」で藤川球児投手(右)は矢野燿大監督からグラブを手渡されマウンドへ向かう=阪神甲子園球場
矢野監督 俺が勝手に思ってるのは、俺が引退の時に、俺が出られなかった。球児が打たれちゃって。それがあって球児が俺に捕ってもらいたいって言ってもらって、やってもらえたのかな、俺に対してやってくれたのかなという。うれしかったです。
10年ぶりのバッテリー実現に声は震えた。浮き上がるような剛速球を「分かっていても打てない。魔球」と評する。思い出は数知れない。「JFK」を軸にした05年「リーグ優勝」。その05年には、当時のシーズン最多登板記録更新がかかった藤川の79試合登板の際に「すごい(カメラの)フラッシュやな」と声をかけたという。06年球宴第 1戦では全10球直球でカブレラ、小笠原を連続三振に斬った伝説を、女房役として演出した。
「引退セレモニー」で藤川球児投手(左)の最後の1球を受ける矢野燿大監督=阪神甲子園球場
悔しい思いも強く刻まれている。03年 4月11日巨人戦では 3点リードの 9回二死から後藤に「同点3ラン」を浴び「ある意味、あそこから球児の伝説がスタートした」という。08年CSでは中日ウッズに「決勝2ラン」を浴びた苦い思いも、ともに味わった。苦境から何度もはい上がった右腕の神髄を語ったことがある。「能力で抑えていた印象があると思うが、実際は大胆な中に、繊細な部分があった。直球を投げる中でも、目いっぱい投げるだけじゃなく、体の近い方に投げるとか、ベルトよりも絶対上に投げるとか。ここは絶対低めに投げるとか。 1球 1球、すごく自分の中で繊細に考えて投げる投手だった」。
9回の守り、マウンドで藤川を迎えた。オール直球のラスト登板に「球児自身の思いもあるし、受け継いでいく後輩に対する思いもあって投げたボールだと思う」。選手と監督としての美酒はならなかったが、イズムを受け継ぐナインと来季挑む。
9回、「引退試合」で登板する藤川球児投手=阪神甲子園球場
「引退試合」を迎えた藤川球児投手が、現役最後のマウンドでに上がった。12球の全球「火の玉ストレート勝負」で坂本、中島から 2三振を奪った。
プロ22年目、「日米通算811試合目」の登板。背番号「22」が最も似合う 9回にコールされた。大型ビジョンにブルペンが映し出され、救援陣に見送られた。今季最多21392人が詰めかけた甲子園。登場曲「every little thing every precious thing」(リンドバーグ)が流れる中、笑顔でリリーフカーに乗ってグラウンドへ。マウンドでは矢野監督が出迎え、抱擁を交わした。内野陣とはグータッチを交わし、この回から途中出場した捕手梅野へ投球練習を行った。
引退試合で 9回に登板する藤川球児投手=阪神甲子園球場
巨人原監督も粋な采配で応えた。先頭打者には先日、「2000本安打」を放った坂本を代打に送った。藤川は直球を 3球投げ込み、最後は 148キロ真ん中直球で空振り三振。坂本も豪快なフルスイングで応えた。続く代打中島への初球には、引退表明後では最速となる 149キロを計測。 4球目には珍しくワインドアップも披露した。 6球目の 146キロ直球で「2者連続空振り三振」を奪った。続く重信は 2球目の 146キロ直球で 2飛。最後の登板は「全12球直球勝負」。藤川らしいラストとなった。マウンドを降りる際には、割れんばかりの「藤川」コール。背番号「「22」はスタンド全方向に、そして相手巨人ベンチにも一礼。両手を挙げ、笑顔で感謝を伝えた。
「日米通算15955球」を投げ終え、計「1252三振」を奪った右腕は、最後のマウンドを後にした。
9回表巨人無死、マウンドに登板した藤川球児投手へボールを手渡す矢野燿大監督=阪神甲子園球場
<藤川ラスト登板全球>
・代打坂本勇人内野手
148キロ直球(見逃し)
148キロ直球(空振り)
148キロ直球(見逃し)
148キロ直球(空振り三振)
9回表巨人2死、藤川球児投手は振りかぶって重信慎之介外野手へ初球を投げる=阪神甲子園球場
・代打中島宏之内野手
149キロ直球(空振り)
148キロ直球(空振り)
148キロ直球(ファウル)
147キロ直球(ワインドアップで見逃し)
145キロ直球(見逃し)
146キロ直球(空振り三振)
9回表巨人無死、代打坂本勇人内野手は空振り三振、左は藤川球児投手=阪神甲子園球場
・3番重信
147キロ直球(ワインドアップで見逃し)
146キロ直球(二飛)
試合前練習開始時には、サプライズでおそろいの記念Tシャツを着たチームメートに出迎えられ、記念撮影。キャッチボールなどで最終調整を終えた。
試合前のセレモニーでは地元の「高知くろしお感動大賞」の表彰を受け、浜田省司高知県知事から賞状が贈られた。対戦相手の巨人からは先日、2000本安打を達成した坂本から花束を受け取った。
始球式は、父の背番号「22」を付けた藤川の長男が務めた。捕手は藤川自身が務めて親子バッテリーが誕生。外角直球がノーバウンドでミットにミットに収まった。藤川は受けたボールを笑顔で長男に投げ返し、球場全体の応援に2人で応えた。
1回表巨人一死 1、 2塁、小幡竜平内野手は岡本和真内野手の打球をエラーし失点する=阪神甲子園球場
阪神が藤川の「引退試合」でもあった今季の巨人最終戦で「完敗」を喫し、勝利をつかめなかった。打線はわずか 1安打。巨人 5投手の前に「完封リレー」を食らった。守りでも 1回の 3失点は失策が絡んだ。 7回の失点は押し出しを含む 3連続四球によるもの。攻守で精彩を欠き、巨人戦16敗目( 8勝)を喫した。
矢野監督は「もちろん最後勝っている状態で球児を投げさせてあげたいというか、そういうふうにしたかったけれど…」と本音をのぞかせた。試合終盤まで不名誉な記録もちらついた。 8回1死まで無安打。中谷が中前打を放って、なんとか「ノーヒットノーラン」は免れた。だが、劣勢をはね返すことができず、藤川のセーブ機会を設けることはできなかった。さすがに矢野監督も「ちょっと寂しい」と残念そうだ。
5回裏阪神2死、捕邪飛に倒れる大山悠輔内野手大山悠輔内野手=阪神甲子園球場
ただ、チャレンジはした。「本塁打王」を争う大山を「1番」に据えた。快音は出なかったが、矢野監督は「力んでいいと思うしね。力むなという方が無理。力んで当たり前だと思う。挑戦、もちろん結果を出さないとね。ダメな部分もあるけど、そうやって自分で思いきって勝負いった結果。悠輔(大山)自身もできたことと、まだまだ成長していかないとダメな部分も分かると思う。思いきっていった結果。(明日も「1番」かと聞かれ)うん、『1番』で」。11日の今季最終戦は打線の爆発で締めくくりたい。
「引退セレモニー」であいさつする藤川球児投手大山悠輔内野手=阪神甲子園球場
さらば、「火の玉ストレート」-。藤川球児投手が10日の巨人戦(甲子園)で「引退試合」に臨んだ。 9回に登板。巨人の代打坂本から三振を奪うなど12球の直球勝負で 1イニングを 3者凡退に抑えた。「日米通算245セーブ」を記録した右腕が、タテジマに別れを告げた。
以下は藤川セレモニーの一問一答
では、スピーチを始めたいと思います。
まず始めにこのたび、野球選手、藤川球児のために、こんな素晴らしい舞台を用意していただいた阪神タイガース球団、そして矢野監督を始めるとするコーチ、選手、スタッフの方々にお礼を申し上げたい思います。
「引退セレモニー」で矢野燿大監督(右)に向けラストピッチングをする藤川球児投手=阪神甲子園球場
本日は阪神タイガースファン、そして全国の野球ファン、そしてプロ野球界の先輩方皆様に、今日この日を迎えるまでに、夢や希望を持ち人生を前向きに生きることができたお礼を伝えたいと思います。
1999年に阪神タイガースに入団して、同じ「ドラフト1位」には同級生、西武ライオンズ松坂大輔、そして巨人軍の上原浩治さんがいました。 2人は 1年目から素晴らしい活躍をしていました。 2人を見て、失敗と故障を繰り返す自分とを比べると、自分には無理だと普通なら諦めてしまうでしょう。でも僕は、今は勝ち負けはついていないと、認めることだけは絶対にしませんでした。当時、周りから厳しい視線を感じたり、厳しい言葉を投げかけられることもたくさんありました。しかし、どんな時もいつも、必ず見返してやる、そういう思いでやってきました。そして2005年、タイガースで優勝することができました。最高の思い出です。
9回のマウンドでボールを受け取った藤川球児投手(左)は矢野燿大監督とハグ=阪神甲子園球場
その後、松坂と上原さんがメジャーリーグに行って、追いかけるように自分もメジャーリーグにチャレンジしました。しかし、本当に苦しいことばかりで、孤独で、また新人のころのようにうまくいかない日々が訪れ、明日すら…大丈夫です(笑い)。明日すら見失いそうになっていました。そんな時、阪神タイガースに入団してからの苦労した経験が僕を救ってくれました。俺は負けていない…。見返してやる…。独立リーグからもう 1度リスタートして自分の力を見せて、地元高知の子供たち、そして日本のプロ野球ファンをビックリさせたいと思いました。そこからタイガースに戻り、 3年間かけてやっとクローザーのポジションに戻ることができました。
9回の登板を無失点に抑えファンの拍手に笑顔で応える藤川球児投手=阪神甲子園球場
見返してやる。その時にはもうそんな気持ちは全くなく、それが皆さんからの叱咤(しった)激励だと知り、心の底からありがとうという感謝の気持ちでいっぱいでした。僕は自分自身に度々襲いかかる苦難に打ち勝つことができました。
清原和博さんへ、あなたがいなければ、今の僕は存在しません。僕をここまで成長させてくれたのは清原さんとの対戦、そして存在です。何年か前になりますが、僕も清原さん自身も苦しい時に、御守りを届けてくださいました。「体を大事にしろよ」。すごく力になりました。キヨさんはとても優しい方です。必ずお礼を伝えに行きますので、今後もよろしくお願いします。
ライバル、松坂大輔へ。必ず投げる姿を見せて、世の中の人を元気にしてください。あなたのそういう姿が今の日本には必要です。僕はあなたの1番の応援団になります。目標でいてくれてありがとう。
「引退セレモニー」でスピーチする藤川球児投手=阪神甲子園球場 (虎テレより)
それでは阪神タイガースファンの皆様へ、お礼を言わせてください。僕の投げる「火の玉ストレート」には、甲子園球場のライトスタンドの大応援団の皆さん、チームの思い、そして全国のタイガースファンの熱い思いがすべて詰まっています。それが皆さんの知る火の玉ストレートの投げ方です。それは打たれるはずがありません。打者のバットに当たるはずがありません。僕が言うのも変ですが、不思議な力が湧いてきて、普段の自分ではなくなるのです。野球選手、藤川球児というのは、皆様の気持ちの固まりだったのだと思います。ファンの皆様にとって僕の存在が誇りだと言うのなら、僕にとってもファンの皆さんが誇りです。その気持ちをこれからは後輩たちに一緒に送り続けましょう。そして、タイガース史上最高のキャッチャーで、僕が世界で 1番尊敬している矢野監督を、「日本一の監督」にさせてあげましょう。選手やコーチの皆さん、あとはよろしくお願いします。もし困った時はいつでも呼んでください。すぐに駆けつけます。
「引退セレモニー」で集合写真に納まる藤川球児投手=阪神甲子園球場 (虎テレより)
そして、僕自身よりも本当に 1度も世間の皆様に顔も見せず頑張ってきてくれた家族へ、この場を借りてメッセージを送らせてください。今までたくさん野球のために我慢をさせてきたけど、やっと明日から夫として普通のお父さんとして、家族のために何でもしてあげられるようになります。長い間、お待たせしました。これからは何をする時も1番にみんなを優先します。今までよりさらに笑顔の絶えない家族になりましょう。
そして、おやじ、お母さん、名前を球児にしてくれてありがとう。野球をやらせてくれてありがとう。辞めようとしている時、何回も引き留めてくれてありがとう。 2人が元気な間に恩返しする時間ができました。これから少しずつ恩返しさせてください。
「引退セレモニー」で集合写真に納まる藤川球児投手=阪神甲子園球場 (虎テレより)
そしてこの 1カ月、セ・リーグの各チームの方々、球場関係者の皆様、こんな1人の選手のためにセレモニーを用意していただいて、本当にありがとうございました。きっとたくさんの子供たちへの夢や希望につながったと思います。夢をつなぐ、これが僕の現役生活最後の 1カ月でやりたかったことです。
それでは皆さん、野球選手、藤川球児とサヨナラをする時が来ました。子供のころからの先生方、今までのすべての友人、そして世界中の野球ファンの皆様、皆様のおかげで最高に素晴らしい野球人生を送ることができました。長い間のご声援、本当に、本当に、ありがとうございました。
藤川球児投手(右)に花束を手渡した岡田彰布氏=阪神甲子園球場
「JFK」の生みの親である阪神元監督の岡田彰布氏も甲子園に駆けつけた。
花束贈呈で姿を見せると、スタンドから大きな歓声が起こった。マウンド上では、藤川とガッチリ握手を交わした。04年から指揮を執った岡田氏はウィリアムス、藤川、久保田の鉄壁リレーを完成させ、翌05年には「リーグ優勝」を果たした。
藤川球児投手の「引退セレモニー」にメッセージを送った久保田智之氏=阪神甲子園球場
藤川球児投手の「引退試合」に際し、盟友 2人が言葉を寄せた。藤川とともに「JFK」と名付けられたジェフ・ウィリアムス氏(阪神駐米スカウト)と久保田智之氏(阪神プロスカウト)。思い出やエピソードを語った。
◇ ◇ ◇
熱い思いがこみ上げた。阪神プロスカウトの久保田智之氏にとって藤川は特別だった。「同い年ということもありますし、良い仲間であり、良いライバルであり、尊敬できる存在ですね。多くのファンの方々がそうであったように、投げ続ける球児の存在が自分が頑張るための活力であり、誇りでもありました」。背番号「22」の存在が自身の野球人生に大きな影響を及ぼした。
05年、久保田氏は「守護神」として 7回藤川からの継投を締めくくり、「27セーブ」を挙げた。当時を振り返り、思い出すのはブルペンでのたわいもない会話だ。「『もう 1点入ったら楽やな』とか『今日はあんまり良くない流れだな、いきたくないな』とか(笑)。今となっては思い出に残っていますね」。あの頃の会話が今でも鮮明によみがえる。
10年 4月、試合後保田智之投手(右)と並んでインタビューを受け笑顔を見せる藤川球児投手=明治神宮野球場
深い絆で結ばれた「JFK」は虎の歴史に輝く伝説になった。久保田氏は07、08年に「最優秀中継ぎ投手」となり、07年シーズン90試合登板のプロ野球記録をマーク。「球児、ジェフに引っ張られて自分がいたと思っていますし、あの 2人がいなかったらこうはなっていなかったと思うので、本当に感謝ですね」と運命的な巡り合わせに感謝する。
久保田氏は今後も野球界で活躍する藤川の姿を期待した。「球児に憧れる野球少年は多いので、これからも一生、野球少年たちの憧れであり続けてほしいと思います。『球児』はこれから野球から離れることはないと思うけれども、これからの野球界のために頑張ってほしいし、また力を貸してほしい」。良き仲間であり、良きライバル-。これからも 2人の関係は変わらない。
9回表の登板を終えスタンドへあいさつする藤川球児投手=阪神甲子園球場
元プロ野球選手の清原和博氏が今季限りで現役を引退する藤川球児投手にビデオメッセージを贈り、あの「事件」を振り返った。
試合後に行われた「引退セレモニー」に登場。「藤川投手との思い出といえば、東京ドームで物議を醸したあの事件です。藤川投手は何も悪くありません。サインを出したのは(捕手だった矢野)監督です」と話すと球場が笑いに包まれた。
続けて「自分の野球人生のなかでバットを振ってボールが上を通っていくっていうことは初めてのことでした。『完敗』です。粉骨砕身。いつ壊れてもいいほど腕を振っていた。これからはゆっくりと肩、肘、そして心を休めて新たな人生に向かってください」とねぎらった。
05年 4月21日、空振り三振に倒れ、悔しそうな表情を見せる巨人清原和博内野手。手前は阪神藤川球児投手=東京ドーム
あの事件とは05年 4月の出来事。「通算500本塁打」がかかった清原氏(巨人)と対戦し、フォークで三振を奪った。清原氏は変化球で勝負されたことに腹を立て「チ○ポコついてんのか」と発言。スポーツ紙に大きく取り上げられ、騒動に発展した。
同 6月巨人戦(甲子園)で因縁の清原氏と再戦し、「5球連続ストレート勝負」などで三振。06年 7月の球宴第 2戦(宮崎)では全球直球勝負を挑み空振り三振を奪った。藤川は「清原さんに育ててもらった。ホームランを打たれてもよかった」と感謝。清原氏は「球児のボールは火の玉やった」と脱帽した。
9回のマウンドで投球する藤川球児投手=阪神甲子園球場
今季限りで現役引退する阪神藤川球児投手が新設される「スペシャルアシスタント(SA)」に就任することが10日、分かった。この日までに球団が要請し、受諾した。ユニホームを着て直接選手を指導することはないが、新外国人調査など編成面のアシストに加え、球団の野球振興に関わる活動のサポートなど広範囲の働きが期待される。これまで球団が引退直後の選手に特別職の就任を要請した例はなく異例のポスト就任となる。
「引退セレモニー」で藤川球児投手(左)は岡田彰布氏と握手=阪神甲子園球場
タテジマで一時代を築いた藤川は、米大リーグ、国内の独立リーグでもプレーするなど経験豊富。幅広い人脈を生かした編成面のサポートが可能だ。さらに球団はタイガースアカデミーの運営や女子硬式野球クラブを新設するなど、野球の裾野を広げる活動に力を入れている。藤川は実績と知名度のみならず、その発信力も抜群。野球振興の面においても大きな力になりそうだ。
※11月11日の予告先発は、阪神・藤浪晋太郎投手(26)ーDeNA・大貫晋一投手(26)です。どちらに軍配が上がるか、楽しみですね。
球児の記事を載せるのも今回が最後かも知れない。フロントに入っても、今までと同じように頑張って下さい。お疲れ様でした。
多くの方と話をする中で、"楽しむからこそ実力が発揮できる"そして"笑うということには大きなパワーがある"ということを教えてもらいました。
これからの1年はグラウンドで苦しい時こそ笑って、楽しいときはもっと楽しく、でもしっかり勝つようなチームを作っていきます。
そして、僕たちが勝つことでファンの皆さんにも思いっきり笑ってもらい、思いっきり喜んでもらえるようなシーズンにすべく、「It's 勝笑 Time!オレがヤル」というスローガンにしました。
2020年 オープン戦 最終順位表
2020年 公式戦 順位表
2020年 公式戦日程と 結果 (10月)
2020年 公式戦日程と 結果 (11月)
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